タイル張り工事の施工、品質基準
JASS19※(2012年改訂)の大きな追加点は下記のとおり
- 有機系接着剤によるタイル後張り工法を追加した。
- タイル後張り工法において①コンクリート下地へのタイル張り(直張り)と②モルタル下地へのタイル張りについて、それぞれ異なる工法と位置付けた。
- セメントモルタルによるタイル後張り工法において、接着強度検査の判定を従来の強度(0.4N/m㎡以上)の基準に加え、破壊状態の基準(コンクリート接着界面破壊50%以下)を追加し合否判定する。
1.有機系接着剤によるタイル後張り工法
- 修繕工事、改修工事でも使用することが増えており、特に躯体のひび割れや躯体目地をまたいで張られてしまっているタイルの張替えに採用することが多い。
- タイルへの接着状況など現場において品質管理基準の誤解も多く、整理しておく必要あり
2.コンクリート直張り
- 近年では型枠精度の向上からコンクリート下地壁にタイル直張りが標準となっている。
- コンクリート下地面の処理を明確に示した意義は大きい。
- 型枠に転用型枠を使用しているため、コンクリート表面が平滑で、タイル張り付けモルタルの付着力が低下
- コンクリート表面の脆弱部、不純物の存在
- 下地面の吸水調整不足によるタイル張り付けモルタルのドライアウト
- 型枠の段差補修に使用される薄塗りモルタルとタイル張り付けモルタルとの剥離(平滑な補修表面となりやすい、ドライアウトを起こしやすい)
3.コンクリート表面の清掃および目荒し方法(JASS19抜粋)
名称 | 概要 | 清掃 | 目荒し |
ワイヤーブラシ掛け | ワイヤーブラシでコンクリート表面を擦り、ぜい弱層を除去する方法 | 〇 | × |
高圧水洗浄法 | 吐出圧30~70N/m㎡、ノズル距離10㎝以内、運行速度3~5min/㎡ | 〇 | △ |
超高圧水洗浄法 | 吐出圧150~200N/m㎡、ノズル距離5㎝以内、運行速度はコンクリートの強度・材質により異なるので目粗しの程度は解説写真3.8を目安とする | 〇 | 〇 |
MCR工法 | 型枠に専用シートを張り、コンクリート表面に凹凸を付与して、それにモルタルが食い込むことにより、はく離を防止する工法 | ― | 〇 |
MCR工法:モルタル・コンクリート・リベットバック工法
- 部分的なタイルの張替えが主となる修繕工事においては、高圧水洗浄や超高圧水洗浄を行うことは難しい
- ワイヤーブラシ(カップワイヤーも含まれると思われる)での目荒し効果が無いとなると、サンダー等により躯体表面の面精度を確保しながら、目荒しを行っていく必要がある
- 張替えでは躯体の欠損補修を見込んでおくことや、直張りであっても付送りモルタル(多くの場合、外部用サンドモルタル)が施工されている部位が多く存在する可能性があり、計画時・設計時においては十分に検討しておく必要がある
3.接着強度検査の判定
破壊状態の基準(コンクリート接着界面破壊50%以下)を追加し合否判定することは、特にコンクリート直張りでのタイルの剥落事例を見てきた限りにおいては重要と思われる。
- 補修箇所は当然に接着界面の割合も合否判定に加える(NGであったばあいの処置についても事前に決めておく)
- 改修前の調査時点で接着界面破壊の割合がNGであった場合、タイルのはく離・浮きが生じていない箇所の補修や今後の維持保全については十分に建物所有者への説明、協議を行う
施工時のポイントは、各工程毎にあるものの特に見過ごしがちな点は下記のとおりであり、試験施工の際に確認しておく必要がある。
- タイル張り下地の表面処理を徹底する
- 吸水調整材の適正な塗布
- タイル張りの際の下擦り(しごき塗り)
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